名古屋高等裁判所金沢支部 昭和29年(う)256号 判決
記録に依れば、原判決は認定事実に対し、昭和二十四年五月三十一日法律第百七十号貸金業等の取締に関する法律(以下旧法と仮称す)第十八条第一号第五条等を適用した上、昭和二十九年八月十日被告人を罰金十五万円に処する旨の言渡しを為したものであることが明白である。ところで、昭和二十九年六月二十三日法律第百九十五号出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(以下新法と仮称す)附則第五項に依れば、新法の施行と共に旧法は廃止されるべきものであることが明かであり、さらに、新法附則第一項及び昭和二十九年六月二十三日政令第百五十九号出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の施行期日を定める政令の規定するところに依れば、旧法第五条、第十八条を改正する新法第七条、第十二条の規定は、同法中の他の部分と異り、いずれも新法公布と同時に、すなわち昭和二十九年六月二十三日、逸早く其の施行を見るに至つたものであり、従つて、原判決宣告当時、旧法第五条、第十八条は、既に廃止されて居たものであること、まことに所論の通りであるけれども、しかしながら、新法附則第十一項は「此の法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお、従前の例による。」旨定めて居るのであつて、罰則適用の関係に於ては、旧法は依然其の効力を保有するものであり、原判決の擬律中、新法附則第十一項を引用していないのは、その判示の方法に於て、些か正鴻を欠く嫌いなしとしないけれども、しかも、斯の如き瑕疵の存在は、毫も判決に影響するものでなく、従つて、原判決の法令適用に誤謬ありとする論旨は、到底これを採用することが出来ない。
(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)